萩原裕大プロのご紹介
傷は愛着を持って使った証拠。金継ぎを通じて経年変化の尊さを伝えたい(1/3)
金継ぎ教室を開き、「本漆金継ぎ」と「簡易金継ぎ」コースを用意
器の破損した箇所に手を施してよみがえらせる「金継ぎ」は、経年変化に美が宿る“侘び寂び”の精神を体現した伝統技法です。物を大切にする先人が生み出した知恵と工夫、日本ならでは美意識は海外でも高く評価されており、訪日外国人が体験に訪れるなど関心を集めています。
「金継ぎの魅力は失敗がないことです。繊細に紡いだ細い線も、力強く描かれた太い線も、すべてがその人の味となります。同じものは二つとしてなく、唯一無二の存在で人間にも通じます」
そう話すのは、「金継ぎ暮らし」の代表・萩原裕大さん。東京都を拠点に教室事業を展開し、都内では自由が丘、六本木ヒルズ、府中、埼玉県では大宮教室を開いています。
また、器の修理や金継ぎに関する講演業も手掛け、2022年には「八意(やごころ)」として法人化。各種メディアからの要望で、ドラマや書籍の監修も数多く行っています。
「当方では二つのクラスを用意しています。漆を使った古典的な技をマンツーマンで手ほどきする4回コースの『本漆金継ぎ』と、2時間で1回コースの『簡易金継ぎ』です」
1日で完結するワークショップなどは、参加しやすいことから人気がありますが、思わぬ落とし穴があるので注意が必要だと言います。
「簡易金継ぎでは接着剤などを使用するケースが多く、食器として使えなくなってしまうんです。当方では試行錯誤の上、食品衛生法の基準をクリアした材料を用いています」
美しく直した器は、今後も生活の一部として持ち主と共に時間を重ねていけるように。萩原さんはそう願っているのです。
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