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松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

URVグローバルグループ 

コラム

インドビジネスの可能性と課題 グローバルサウスの本命市場に、中小企業はどう向き合うべきか?

2024年4月28日

テーマ:インド 今

コラムカテゴリ:ビジネス



1、僕のインド事業の現状


今、インドは、日本企業で海外マーケットを意識する企業が、最も注目する新規市場ではないでしょうか?

インドにモディ政権が誕生した直後から、僕は、インドの現地資本との合弁会社に投資し、インド事業を創ってきました。この合弁会社は、僕が持つ販路に輸出をするための、野菜工場ビジネスという、飲食一次産業のメーカー事業を営んでいます。

日本制の野菜工場のシステムを導入し、安定した販路に向けた輸出を行い、極めて生産効率の高い生産方式で、無農薬にて野菜を生産する拠点として、人件費と電力費用の安いインドを僕は選び、現地の経営者と合弁の形で会社を運営しています。

現在、工場は、2か所に拡大しています。

このように、僕は、インドという国で事業を展開しているため、インドという国を頻繁に訪問し、現地で情報収集を続けてきました。

このコラムは、そんな僕からみた、インドという国の可能性や優位点と、逆に、課題と劣位点を発信したいと思っています。

旅行や視察で、インドの表面的なところだけをみているヒトとは異なる、インドで事業を現実に遂行している者だけがわかるポイントも書いて参ります。

2、ハイデラバードやバンガロールの街並みをみて、インドを理解するのは、大間違い


インドのGDPの成長によって、インドへの企業の視察旅行も増えています。インドへの注目は、南部に集まっており、特に、ハイデラバードやバンガロールへの注目が集まっています。URVグローバルグループのインドの現地オフィスも、バンガロールに置いています。

URVグローバルグループ グローバルネットワーク
https://urv-group.com/company/global_network/


これらの都市をみると、おそらく、インドという国への印象が変わります。特にバンガロールは、先進国のIT都市とまったく遜色がありません。

しかし、これらの都市をみて、インドを判断すると、大変な間違いを犯します。

インドは、限りない可能性を秘めた国であり、URVグローバルグループもその事業や、インドへの日本企業進出支援や、インド企業の日本進出支援に力をいれていますが、他方で、先進国や中国では、考えられないほどの、保守性や閉鎖性をもった国でもあり、非常に、リスクと参入障壁が高い国です。

このコラムでは、インドに現実に進出して、現地企業と合弁事業を行っている僕が、その可能性とリスクや閉鎖性を発信します。

3、インドの可能性を見据える


GDPで、宗主国のイギリスを抜き、更に、ドイツや日本といった、欧米の経済大国を凌ぐ経済力を持つ国に成長することが確実なインドは、莫大なポテンシャルを秘めた国であり、世界中の企業が、その市場への参入機会をうかがっています。

そのインドの可能性を、主な項目別にみてゆきましょう。

インドのマクロの成長性


人口が増え続け、若年者と労働人口の数が多く、GDPが伸びているインドは、安い人件費と今後の成長性という観点からみて、非常に有望な国であることは間違いありません。

モディ政権は、ルピーの切り下げのような経済の荒治療を行っても、その人気は衰えず、確実に、インドはよい方向に向かっています。

各州も、日系資本の受け入れに積極的であり、一方で、東南アジアやアフリカのように、中華系資本に先を越されているということもありません。政治的に、インドと中国は緊張関係にあるため、中華系よりも、欧米系や日系が、進出しやすいというメリットもあります。

英語と、IT産業


上流階級や高学歴者には、英語が通じます。ちなみに、インドの第一言語は英語ではなく、ヒンディ語であり、インド国内には200を超える言語が通用しています。ただし、高学歴者は、英語で学位を取得しております。

インドというと、日本企業はITと連想するでしょう。インドのIT産業は、いまだにインド社会に根強い、カーストの職業定義の中に入っていないため、低カーストの人たちでも、仕事にできるから、盛んなのだという話しを、よく日本では耳にします。

しかし、これは、インド社会というものを想像でしか語っていない、インドを知らない日本人の幻想にすぎません。

インドのIT産業は、アメリカを中心とした欧米と密接に関連して発展してきており、その担い手は、アメリカ留学をして、欧米企業で働いた経験を持つエリート層です。インドの公立学校は、ヒンディ語で教育が行われており、英語で教育をする私立学校に通うためには、親が相当な資力があって、子供の教育に投資ができる家庭の子供であることが、どうしても必要です。

このような家庭は、バラモンか、クシャトリアという上位カーストの階層の家庭に限られており、従って、IT産業に従事できる人は、必然的に、これらの高カースト出身者に限られてくるのが、実際のインドの姿です。

経済のエンジン役を担う財閥


インドは、企業社会でも強烈な格差社会であり、少数の勝ち組が、経済を牽引する構造にあります。

その経済の牽引役が、財閥です。

日本では、タタ財閥が有名です。トップの時価総額を誇る、トップ財閥です。時価総額は、日本円換算で、33兆6000億円に達しています。

その他、時価総額2位のリライアンス財閥や、3位のアダニ財閥など、10大財閥が、圧倒的にインド経済を強力に牽引しており、国際的な競争力を誇っています。

財閥は、広域な事業に参入する多角化戦略で、インドに多様な事業機会を創造しており、インドが経済大国になってゆくエンジンの役割を果たしています。

4、インドの課題は、現在も山積している


このように、非常に高いポテンシャルがあることは間違いないインドですが、しかし、一方で、その社会には、大きな課題が多数存在していることも、また事実です。

企業は、進出を考える場合、このような課題を充分考慮し、そのうえで、インドの将来性にかけてゆく意識が必要となります。

カースト制度や女性差別


カースト制度は、国際的な人権に対する批判を受けながらも、厳然とインド社会に存在する制度で、その歴史は数千年に及び、インド社会の基本構造を支えてきたものですので、そう簡単になくなるものではありません。

僕たち外国人が、今、インドに行き、個々にお付き合いするインド人に、
「あなたは、どこのカーストに属する方ですか?」
と、聞くことは、地雷を踏む行為であり、慎まなければなりません。

まして、企業の面接で、属するカーストを聞くことなど、論外です。

一方で、個人的に、
「私は、バラモンに属します。」
と、インド人が話してくることがあります。ただ、それは、そのインド人が、バラモンやクシャトリアといった、上位カイーストの出身者に限ります。

カーストによる問題は、ものすごく、奥深い問題です。

下位カーストや、アウトオブカーストに属するヒトは、所得の高い職業にはつけず、従って、その子女を英語で教育する私立学校にあげることができません。

インド社会に存在する200以上の言語は、外資である僕たちと、英語が使えない、これらの人たちを隔絶しており、僕たちが、彼らとコミュニケーションをとることができません。

インド社会でビジネスを進める場合、口にはだせないのですが、このカーストの存在を念頭においておく必要があります。

また、人権問題として、女性に対する差別傾向も、念頭においておく必要があります。先進国の場合、当然、赴任担当者は、男性だけでなく、女性も対象となりますが、残念ながら、インドでは、現地への赴任には、女性は向きません。

外出時のトイレの安全性の欠如(トイレでの性犯罪の多発)や、商談での女性蔑視など、男性が行動する場合に比べ、どうしても、行動がしにくくなります。

良し悪しの問題ではなく、インド社会の現状を一旦受け入れたうえで、考えてゆかねばなりません。

環境汚染や、不衛生な食材


そして、インドに実際に行ってみた方しかわからないのが、その深刻な環境汚染と不衛生な食材です。

スイスのIQエアー調査によると、世界の大気汚染が「最も深刻」なワースト15都市のうち、13都市がインドであり、「かなり深刻」な都市30都市のうち、22都市がインドです。

その大気汚染による、肺疾患・心筋梗塞・頭痛を訴える人が、インドには非常に多く、外国人でも、インドに入れば、例外ではありません。この大気汚染は、経済力の増大で減るどころか、増大傾向を示すと予想されています。

また、不衛生な食材も、深刻なインドの問題です。僕が、よく知っている日本企業のインド駐在員の男性は、外食で食べた豚肉が原因で、腸内に大量のサナダ虫が発生し、手術をして一命をとりとめました。ヒンズー教は、豚肉を食べることを忌避していますが、それは、単なる宗教的な問題ではなく、糞尿の処理として糞尿にまみれた環境で豚を飼っているインドでは、その肉は、食料にしてはならないほど、不衛生です。

これは、肉だけではありません。不衛生な肥料でつくる農産物や、川に有毒な物質を垂れ流すことが原因の魚の汚染など、食材のほとんどが汚染されており、インド産の食材を食べることは、健康に大きな問題が発生する可能性があるというのが、現状です。

経済のGDPは大きくなっても、このような問題は、解決されるどころか、むしろ深刻になっているというのが、インドの現状です。

5、僕は、インド市場に、こう向き合う


以上、インドは、非常に大きなポテンシャルがある一方で、まだまだ多くの課題を残す国であるということをみてきました。

会社の設立という観点でも、現地法人との合弁を設立することになり、その場合、インド企業と日本企業との間の、企業文化の違いや、経営に関する考え方の違いなどで、現地の駐在員が、日本の本社と、インド企業のはざまに立たされることも多いのです。

インドという独特な社会に入ってビジネスを展開する場合、日本側が、自社の企業文化や日本流の考え方を控えることも、重要な成功のポイントになると思います。

そのうえで、しっかりと組める現地に精通する相手方をリサーチすることが、インド展開をする第一歩になると、僕は、思います。


松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/

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