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拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

”訴訟ゼロ”経営を維持する秘訣

2022年6月30日 公開 / 2023年7月11日更新

テーマ:中小企業の攻め方・守り方

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 企業法務経営戦略


”訴訟ゼロ”の重要性

車の運転には”事故ゼロ”が絶対ですが、事業の運営には”訴訟ゼロ”が重要です。

令和2年の司法統計によると、被告が欠席しないで争った訴訟では、3割近くが1年以上の間、訴訟が続いています。
判決で訴訟が終わった場合は控訴が可能ですので、さらに半年から1年の間、訴訟が続くことになります。
この長期間、リソースの一部を訴訟に費やさなければなりません。
訴訟を有利に進めようと思えば、長期間にわたる細かな資料を徹底して収集しなければならないこともあります。
大企業であれば、専属の人員を確保できるかもしれません。
しかし、一人が何役もこなす中小規模の事業者であれば、その負担は甚大です。

また、話合いでの解決するという段階であれば、当事者のみの間で、いわば秘密裏に事を進めることができます。
しかし、訴訟となると公開が原則ですので、「顧客とトラブルを起こす悪徳企業」「従業員とトラブルを起こすブラック企業」などと言われるレピュテーションリスクも考慮に入れなければなりません。

これらのことを踏まえると、訴訟になってからどうやって勝訴するかを考えるのではなく、そもそも訴訟の当事者にならないこと、すなわち”訴訟ゼロ”を維持することが、いかに重要かが分かると思います。

どうやって”訴訟ゼロ”を維持するか

事業を継続する中でトラブルを起こさなければ、訴訟が起きることもありません。
それには、きちんとした契約書を作り、守らなければならない法律と契約書の条項とに従って事業運営をする必要があります。
もちろん他社や顧客との取引だけでなく、会社と従業員との関係にも当てはまります。

それでも運悪くトラブルが起きてしまうことがあります。
そんなときでも、訴訟となる前にトラブルを解決してしまえば、リソースの消費を最低限に抑えることができます。
それには、訴訟となった場合の見通しを持ち、落としどころを探らなければなりません。
たとえば、訴訟になっても100万円の支払いをしなければならない可能性があるとすれば、そうならないように徹底的に争うよりも、訴訟になる前に50万円を支払って解決してしまう方が、リソースの消費を考えると結局は得策であるという場合が少なくありません。
見通しとして、こちらの分が悪い場合なら、80万円を支払ってでも解決してしまうのが得策ということもあり得ます。

”訴訟ゼロ”を維持するには、有効で疑義を生じない契約書を作り、適用される法律を理解して体制を整え、訴訟となった場合の見通しを持つことが必要です。
そのためには、このようなことができる人材を確保しておかなければなりません。
しかし、中小企業が自前でこれを実現するのは、人件費という面から言っても、必ずしも現実的ではありません。

したがって、結論的には社外の弁護士に頼るということになります。

弁護士への依頼をどのようにするか

では、弁護士への依頼をどのようにすればよいでしょうか。

ひとつには、弁護士の必要性を感じたときに、スポットで依頼するという方法があります。
必要な時だけの依頼ですから、費用を抑えることができるというメリットがあります。
また、弁護士にも得意/不得意な分野が少なからず存在しますから、必要となった分野ごとに弁護士を選定することができます。
ただし、必要かどうかが事業者側の判断になりますから、必ずしも本当に必要な場面で依頼ができているとは限りません。
トラブルの種は、できる限り早くに摘んでしまうに越したことはありません。
費用を気にしているうちに種から芽が出てしまい、結局高くつくのであれば本末転倒です。

もうひとつには、弁護士と継続的な契約をするという方法があります。
このような契約をした弁護士を、一般的には「顧問弁護士」と呼んでいます。
継続的な契約をしていますから、料金を気にせず、ちょっと気になることがあれば、いつでも聞くことができます。
スポット的な依頼の場合は、背景事情を詳しく聴き取る必要があるため面談を要することが多いですが、継続的な関係があれば、あらかじめ背景事情もある程度了解済みであり、メールなどで気軽に相談することができる場面も多くなるでしょう。
デメリットとしては、必要がない場合にも継続した費用が発生するという点が挙げられます。
また、分野ごとに弁護士を選定するということもできません。
ただ、この点については、顧問弁護士を通じて特殊な分野に対応できる弁護士を紹介してもらうという方法は可能です。

おすすめは?

どのような方法で弁護士に依頼するのがいいのかについては、さまざまな考え方があると思います。

ただ私は、最初スポット的に依頼をしてみた上で、弁護士の個性と合うと思えたのであれば、そこで継続的な契約を検討するのがよいのではないかと思っています。
また、月に3回までとか、相談の回数を制限することで月々の費用を少し安くするというプランを提供している弁護士事務所もあります。
しかし、相談の回数を気にしていては、継続的な契約をするメリットがあまりないのではないかとも思います。

さいごに

顧問契約をさせていただいた事業者様からは、これまで弁護士に相談せずにやってきたことを思い返すと冷や汗が出る、との感想をお聞きすることがあります。
”訴訟ゼロプラン”を実行するために、それぞれの事業者様にあった方策を見つけていただければと思います。
(もちろん、車は”事故ゼロ”でお願いします。)

⇒ 未払いの残業代はありませんか
⇒ 解雇するまで何をどうすればよいか
⇒ 従業員を解雇したいとお考えの方へ
⇒ パワハラ防止法に対応できていますか
⇒ 経歴詐称で懲戒解雇したい
⇒ 早期退職者を技術顧問として活用する ~発明の完成と特許を受ける権利~
⇒ 共同プロジェクトから離脱できない ~サンクコスト効果~
⇒ 無断で改変された現代アート作品 ~最近の報道から~
⇒ その”ソフトウェア使用許諾契約書”は何を許諾しているのですか
⇒ 正規雇用と非正規雇用との処遇の相違
⇒ 定年後の再雇用 ~定年制度の終焉~
⇒  「収入のための残業」の削減 ~働き方改革~
⇒ 契約書がなかったら
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