マイベストプロ京都
拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

その”ソフトウェア使用許諾契約書”は何を許諾しているのですか?

2023年4月13日 公開 / 2023年4月14日更新

テーマ:中小企業の攻め方・守り方

コラムカテゴリ:法律関連


本屋さんで本を買っても、本の使用許諾契約を求められることはありません。
買ってきた本を自分で読むのに誰かの許諾は必要ありません。
CDを買ったときも同じです。
買ってきたCDを聴くのに、誰かの使用許諾は必要ありません。
しかし、コンピューターのアプリケーションソフトを購入すると、ソフトウェア使用許諾契約への同意を求められます。
もちろんアプリケーションソフトには著作権がありますが、それは本やCDも同じです。
では、ソフトウェア使用許諾契約は、何を許諾しているのでしょうか。

今さらですが、コンピューターのソフトウェアには、プログラムの著作物(法第10条第1項9号)として著作権が発生します。
そして、著作権者は著作物を複製する権利(複製権)を専有します(法第21条)。
購入したソフトウェアを自分のコンピューターで実行させるにはインストールしなければなりませんから、必ずソフトウェアを複製することになります。

ただ、ソフトウェアを記録した記録媒体の所有者には、そもそも自分がコンピューターで実行させるために「必要と認められる限度」での複製が法律で認められています(法第47条の3第1項)。
そして、コンピューターにインストールしたソフトウェアを実行させるのに、著作権者の許諾は必要ありません。
ソフトウェアを実行させる権利は著作権の内容となっておらず、著作権者が専有しないからです。

したがって、「必要と認められる限度」を超えたソフトウェアの複製があった場合に著作権侵害を問うことができ、その部分での複製を認める場合が著作権の「許諾」ということになります。

一方、「必要と認められる限度」以上にソフトウェアの複製を制限したり、本来自由であるソフトウェアの実行を目的や使用する者で制限するのは、契約上の「制限」ということになります。
この制限に反しても著作権侵害は問題とならず、契約違反に問えるだけです。

ソフトウェアの利用関係を定めた契約書は、「許諾」しているのか「制限」しているのかを明確に区別することなく、ほぼ一律に「ソフトウェア使用許諾契約」という名称が付けられています。
そしてほとんどの契約は、その名前に反して著作物の利用を「許諾」するのではなく、ソフトウェアの実行を「制限」する内容となっています。
中には、「使用」や「使用権」について何ら定義することなく、「非独占的な使用権を許諾します」とだけ定めている契約も少なくありません。

著作権侵害と契約違反とでは、法的効果が異なります。
入手したひな形をなんとなく使いまわすのではなく、その条項が、本来著作権侵害となる行為を許諾しているものなのか、本来自由な行為を契約によって制限しているものなのか、常に意識しておくことが必要です。

この記事を書いたプロ

拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(京都北山特許法律事務所)

Share

関連するコラム

拾井央雄プロへの
お問い合わせ

マイベストプロを見た
と言うとスムーズです

お電話での
お問い合わせ
075-708-5826

 

※申し訳ございませんが電話相談は実施しておりません。
※リモートワーク中は、発信専用番号(着信しません)"070-5044-3569"からお電話を差し上げることがございます。

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

拾井央雄

京都北山特許法律事務所

担当拾井央雄(ひろいおうゆう)

地図・アクセス

拾井央雄のソーシャルメディア

facebook
Facebook
  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ京都
  3. 京都のビジネス
  4. 京都の法務・契約書
  5. 拾井央雄
  6. コラム一覧
  7. その”ソフトウェア使用許諾契約書”は何を許諾しているのですか?

© My Best Pro