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非対応のパソコンにWindows11導入は何が問題なのか、その理由を専門家はこうみる

2022年8月19日 公開 / 2024年4月30日更新

テーマ:Windows11の情報

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: ITマネジメントパソコントラブルパソコン修理

●最近ですが、Windows11非対応のパソコンでも裏技で導入が可能になるという情報が拡散しているようです。

●クリーンインストールしたりアップグレードを制限する部分をいじって制限を回避すれば、実際に導入できるのは確かです。しかし、Microsoft公式ページではそのような方法でアップグレードができても推奨はできないといっています。

●そういうことを言うと「Windows10の時と同じように導入はできるけど、どうせまた責任回避目的でお題目としてできないといっているだけだろ?」と思う人も出てきます。でも今度はどうも様子が違っていてそう単純な問題ではないようなのです。

●一体何がどう問題なのか、今回は非対応パソコンにWindows11を導入することについて専門家の見地から詳しくお伝えしたいと思います。

Windows10で大丈夫だったけど11ではそうはいかない

Microsoft公式ページ
最小システム要件を満たしていないデバイスに Windows11をインストールする

●上記の参照ページでMicrosoftが言っていることをかみ砕いて簡単に言うと「完全に自己責任だぞ!何かあっても絶対に知らんからな!!一応警告しておく」といっています。

●Windows10の場合、Windows7や8からのアップグレードはよほどのことがない限りほぼ可能で導入後も使えなくなることはありませんでした。しかし、Windows10とは違ってWindows11は厳しいシステム要件があるOSです。今は大丈夫でもこれから先、非対応のパソコンで問題が起きない保証は何もありません。


Microsoft公式ページでWindows11に対応しているプロセッサ(CPU)が公表されています。そのリストに掲載がないCPU搭載のパソコンは非対応ということになります。

突然更新されなくなる可能性がある

●Microsoftが公式に言っているように、非対応PCではデバイスドライバーやセキュリティーなどシステムの更新が配信されない可能性があります。現在、非対応PCでも導入できたという情報では、導入後の更新もできているから大丈夫と言っているようです。しかし、それは今の時点で大丈夫というだけです。これから先どうなるかはわかりません。

●そもそも、Windows11がなぜ導入のシステム要件を厳しくしているかということを考えておく必要があります。その厳しさの大きな要因は、セキュリティー面の強化にあります。必須項目である「Core第8世代以上のCPU、UEFI+セキュアブート、TPM2.0」というのはすべてセキュリティーに関する部分です。

●また、Windows11はグラフィックスのシステム要件としてDirectX12に対応している必要があります。対応していない場合、パフォーマンスが低下したり負荷が大きくなります。非対応のノートPCにインストールすると、CPUファンがWindows10の時よりも頻繁にしかもかなりの回転数で回り始めることでも確認できます。対応していないと処理が非効率化するのです。

●条件を満たさないPCの場合、それらの部分に関連した何らかの更新が行われた際にデバイスドライバーなどが自動的にパージされてしまう可能性があります。例えば追加パッケージの展開ができないとか組込めない、また大型更新の際に整合性の面でチェックが厳しくなる可能性もあります。そうなると動作が安定しなくなるだけでなく、起動すらしなくなってしまうことも充分に考えられます。

●Windows10でもこれまでアップグレードや大型更新の際に、対応していないデバイスドライバーやソフトウェアを自動的にパージしてきました。特に事例の多かった古いプリンターやグラフィックスアダプタなどはいい例です。ということは、Windows11でもそのうち動作しなくなるデバイス、ソフトウェア、サービスなどが出てきてもおかしくはありません。

●手動やコマンド対応すれば更新が可能かもしれませんが、できない人にとってはお手上げ状態になります。ですから、今導入できてとりあえず更新もできているからということで、バリバリのメイン機として使用することは非常にリスクを伴います。

HDDでWindows11を導入していると・・・

●先日、気になるニュースが飛び込んできました。

Microsoft、2023年めどにHDDブートドライブのサポート廃止する方針か

●Microsofは、Windows11のインストールデバイスからHDDを外すかもしれません。今後のアップグレードでSSD(M.2)などのより高速なストレージデバイスをブートドライブとして必須とする可能性があります。CPUやメモリなどパソコンの処理能力向上に伴って、HDDの転送速度はボトルネックになりやすく処理が間に合わなくなってきているという実情からの流れだと思われます。

●またWindows11自体、高速処理可能になった現世代または次世代のデバイスを想定していて、それに合わせてOSのセッティングをしていることも大きな理由でしょう。Windows11のシステム要件ではデュアルコア以上のCPU、4GB以上のメモリとなっている点でも明らかにWindows10よりも要件が上がっていることでもわかります。

●つまり、最近のデバイスが大容量で高速処理可能になってきたからOSもそれに合わせて最適化するのでそれに追い付けない遅いデバイスは弾きます・・ということでしょう。確かに最近のHDD搭載パソコンの動作がおそくなってきたことはサポートの現場を見ても明らかです。

●そうなってくると現在販売しているHDD搭載の中古パソコンは、今後Windows11の再インストールが可能かどうか怪しくなってきます。古い対応外パソコンのほとんどがまだHDDを搭載していることを考えると、その点でも非対応PCにWindows11を導入することはリスクを伴う可能性が出てきます。

●以上のように、非対応のパソコンへのWindows11導入はリスクがあります。サブ機とかネット専用機などのように、いつどうなっても良いというパソコンなら導入して使ってもいいですが、ビジネスや事業などで使うメインパソコンとして使うのは非常に問題があると思って良いでしょう。


「できる」と「使える」は意味がまったく違う

●ブログや動画サイトなどでWindows11非対応PCでも導入できる裏技ということで紹介されているものがかなりの数あるようです。実際にそれを見て導入をしてしまう人も出てきています。

●また、ネットオークションや通販の中古パソコンでは、Windows11インストール済みということで販売している業者なども数多くいます。問題があるのなら売らないはずだから大丈夫だろうとすっかり信用して購入してしまう方もいると思います。

●しかし、専門家として判断させていただくならそのようなものは前述した内容から言ってもかなり問題があると思います。業者と専門家は違います。業者は売れればいいという勢いで売ります。Windows11非対応のPCに導入することは違法というわけではありません。なので法律に抵触さえしなければ何でもやります。

●問題があったらその時々で対処するから大丈夫という業者もいます。リスクマネジメントなんて考えている業者はわずかです。しかし、違法ではなくても同義的にどうなのかといえば、ユーザー目線の真っ当で良心的な業者ならそのような売り方はしないでしょう。

●特に専門家は、いつか誰かに問題が発生する可能性がはっきりとわかっているものを一か八かで推奨するようなことはしません。事前に情報をキャッチしてできるだけリスクを回避することが専門家の役割です。

●また、SNSや動画サイト、ブログなどで「ネタとしてちょうどいい」、「アクセス数が稼げる」というだけの動機で拡散している情報についても問題です。そういったものを鵜呑みにしてありがたがるのは情報リテラシーが浅すぎです。

●最近そのようなエンタメ的な情報を専門家が発信する情報より確かだと思ってしまう傾向があるようです。そのようなエンターテーメントのネタと専門的知見を同列に考えるのは問題です。これは他の問題でもネット上で広く起きていることです。

●要するに「できる」ことと「使える」ことを分けて考える必要があります。Windows11をパソコンにインストールすることが「できる」という事実はあってもその後問題なく「使える」ということとは同義ではありません。

●一見有益に感じる情報でもエンタメとして発信する目的はほとんど自己の利益のためです。専門家のように社会的責任や公益性などを考えているものはほとんどないといって良いでしょう。要するに無責任ということです。エンタメなら最後に「知らんけど」をつけ加えれば済むと思うかもしれませんが、専門家がそうなってはおしまいです。

人は自分に耳触りの良い情報が本当と思う

●マーケティングなどで言葉を使う際にはできるだけ肯定的な表現が好ましいと言われます。確かに否定的な言葉や表現では人の好感は得られないかもしれません。しかし、商売やビジネスのシーンではそういうことが当てはまっても、人の生活や安全について情報を発信する場合はそういうわけにもいきません。

●ダメなものをダメといわなければ人は聞きたいことだけを聞いてしまう傾向にあります。最近、気象関係のアラート表現が強くなりました。それは空振りでも安全を優先させなければならないからです。

●自分が今触れている情報が自分にとって都合が良いものだけになっていないか、今一度ふりかえってみてください。もしそうであれば、ネット情報社会でリテラシー向上のためにもメリットとリスク両面で常にものを考える習慣を身につけましょう。

筆者実績 http://www.kumin.ne.jp/kiw/index.htm#ss

NetProve ネットプローブ「情報管理サービス」
九州インターワークス
http://www.kumin.ne.jp/kiw/security.html

この記事を書いたプロ

古賀竜一

コンピューターサポートのプロ

古賀竜一(九州インターワークス)

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